それからまた何日かが過ぎ、槐はまた引き綱を付け、部屋の外に出された。
また「便所」に行かされるのか、それとも何処か別の場所に移動させられるのか。
或いは――と、いくら余計な希望は持つまいと思っても、所有主たちのもとに戻されるのではないかと――思ってしまう。
外界のことはもう考えないようにしていた。
うすら寒い廊下を這い進みながら、心臓は不安と期待に踊る。
いつもの世話係を含む、三人のスタッフに付き添われた先は、確かに通い慣れた「便所」ではなかった。
見知らぬ大扉の前。そこには、あの六人の所有主の一人が待っていた。
ただし、このあいだ訪ねて来た主ではない。
槐はこの男には良い印象がなく、恐れていた。
いつも執拗に長時間玩弄して、槐の自尊心を破壊して徹底的に辱めるのを好む男だった。
その彼が、満面の笑顔で迎えたのを見た瞬間、槐はぞっと背筋を凍らせた。
そして、扉が開かれた。
薄暗いフロアには、ずんずんと腹に響く重低音が流れていた。
むっとするテストステロンの臭い。発情した男の臭いがフロア内に充満していた。
薄闇のなかに、ばらばらに、或いは三々五々に、佇むのは男、男、男。
その殆どが服を着ていない。全裸だ。
扉が開いたのに気が付いた者は皆、槐たちの方に顔を向けていた。
不安にかられて途惑う槐の腕を、スタッフの男たちが引っ張って立たせた。
さあ、お待ちかね、本日のメインイベント、生贄の到着だ。
マイクを持った所有主の男のその一声で、殆ど全員の視線が、槐に集中した。
ぎらぎらと欲望に滾った眼、その熱を持った視線が剥き出しの膚に突き刺さる。
そのうちの一人が、自分の身体を舐めるように凝視しながら股間をしごいているのを見てしまい、喉が塞がれたように声を失った。
呆然としているうちに、首輪から引き綱が外された。
次いで、コックハーネスも素早く取り外され、フロアに群がる男たちの群れに向って背を押された。
よろけて二三歩前に出て、恐怖に立ち竦む。悲鳴すら出ない。
恐怖で睾丸が縮み上がりそうだったが、そうはならなかった。
無数の男たちの手が伸び、腕や髪やあちこちを掴まれ、引き倒された。