「精液便所のお前にはお似合いだろう」
ようやく輪姦の傷痕も薄れた頃、そんな台詞と下卑た笑いと共に槐に用意されたのは、人間の男との性交用に調教された犬との獣姦。
数え切れぬくらい犯され、とことんまで堕ちた淫乱な性交奴隷に相応しい、いや勿体無いくらいの相手だと、首輪の引き綱で引き据えられて上がったステージで告げられた。
マイクを持った司会者が、もっともらしい口上を喋っているのが聞こえるが、言葉が頭に入らない。
輪姦イベントの記憶が稲妻のように閃いて蘇り、くらくらと視界が眩む。
スポットライトが明る過ぎて、ステージの下はぼんやりとしか見えないが、暗い観客席に漂う異様な熱気から、多数の人間がこれから起こるショウを固唾を呑んで見守っているのが感じ取れる。
奴らは、槐が犬に犯されるのを歓んで見物する気なのだ。
向き合わされた黒毛の大型犬は、成人男性と変わらぬ大きさで、獰猛な顔つきだ。裂けた口からは鋭い牙が覗く。あれに襲い掛かられれば、ひとたまりもなく押し倒されて、喉を食い千切られるだろう。
だらりと平べったい舌を出して、ハアハアと吐く息は熱く、獣臭い。
太いパイプのようなつるりとしたペニスが、下腹に張り付いているのが目に入り、槐を恐怖させた。
これから、あれを体内に入れられる……。
ごくりと唾を飲み込んだ。
しかし、これまでの数々の経験が、槐から抵抗の気力をすっかり殺いでいた。
どれほど足掻こうと叫ぼうと無駄ならば、表情を殺し、口を噤んで従うのみだ。彼らは決して容赦などしないし、少しでも逆らえば、より屈辱的で苦痛の多い方法で痛めつけられるだけなのだから。
絶望と諦念を胸に、槐は従容と男の命令に従い、自分から尻を犬に向けた。
手首と足首が、革ベルトで床に固定された。首輪から引き綱が外されて、代わりの短い鎖が同様にフックで床に繋がれた。
慎ましやかに目を伏せ、指示通りに高く尻を掲げて、恐怖の時を待った。
槐は既に何かを期待することを止めていた。ここには希望などは無いのだった。
犬が近付いてくる気配を感じ、身を震わせる。
熱い息を尻に感じたかと思うと、鼻先が肛門に捻じ込まれ、舌で襞を舐め上げられた。
竦み上がる間もなく、犬の舌がれろれろと蠢き、思わず鼻にかかった甘い呻き声を上げてしまって狼狽する。
それだけではなく、潤んだ粘膜を宥めるようなその刺激を、自分がもっと欲しがっていることにすら気付いて戦慄した。
男たちに作り変えられたこの淫らなからだは、こんな獣の舌にも反応してしまうのか。その恐怖と惨めさが、更に倒錯した被虐の快感を煽る。
びちゃびちゃと立てる音を聞くたび、切なく湧き上がる喘ぎ声を押し殺す。腰が揺れそうになる。
あれほど残酷な仕打ちを受け続け、人間としての誇りを全て剥ぎ取られたかに見えた槐にも、まだ越えられない一線は残っていたようだ。
いくら何でも、こんな大勢の人間の前で、犬にイかされるのは嫌だった。
そう歯を食い縛るのに、喉からは啜り泣くような奇妙な音が洩れる。
舌が去った時には、危うく悲鳴を上げそうになった。
一瞬我に返ると、真横で見下ろす男のニヤニヤ笑いが目に入って、槐を更に絶望の底に突き落とす。この男は槐が犬に舐められて感じていたのに気付いていた。
そればかりか、観客席から伝わる熱気から、槐の痴態を全員が観察していたと悟る。
ぐらり、と頭の芯が捻じれた。
「たっぷりと犯してもらえ」
そう男が笑いながら言った。
立ち上がった犬の前足が槐の腰を抱え、ずぶりと熱い塊が肛門にめり込んだ。
固くて太いものが直腸を抉じ開けて入ってくる。
人間の男よりも遥かに太くて長いそれに、いっぱいに貫かれて、穿たれる。槐は声を上げた。
大勢の視線が今、犬との結合部に注がれているのだろう。その部分が熱で蕩けそうだった。
犬が腰を動かし始めた。肉が肉を打つ音が静まり返ったステージに響き渡る。
異変は間もなく始まった。
浣腸液を大量に流し込まれた時のように、腸内が圧倒的な質量で満たされてゆくのだ。
ぐちゃぐちゃに中から押し広げられて、もみくちゃにされて、苦しくてたまらないのに、股間のモノはいつの間にか勃起して、精液交じりの先走りをだらだらと垂らしていた。
それだけではない、結合した基部がどんどん膨らんで、肛門がぎちぎちに栓をされたように押し広げられてゆく。
槐は顔を朱に染めて悲鳴を上げ続けた。涙が流れる。
腸が内側からずどんずどんと殴りつけられているようで、腹の奥が破裂しそうだった。
「言い忘れてたが、犬は入れたらすぐ射精を始めるんだ」男が楽しそうに告げる。
「抜けないように根元に瘤が出来てな、そしたら本格的に射精だ。そいつは一時間くらいはそのまんまだ。楽しめるぜ」
忘我のただなかで、ゲラゲラと上がった哄笑を遠くに聞いた。
衆人環視の前で犬に犯されて、腹いっぱいに精液を注がれて、ひぃひぃ叫んでよがる。
ケダモノに犯されて感じる、淫乱で最低な、牝犬以下の性交奴隷。
それが自分だった。