事故物件 - 6/10

 元々は単独でスレ立てされたものではなく、何年か前に有名な怖い話スレに連続投稿されたのを引っ張ってきて、それだけで新しく一本にまとめ直したものらしい。
 話は、約十年前、当時大学生だった俺氏がアパートに引っ越してきたところから始まる。
 元スレの日付は20××年×月××日になっているから、そこから更に十年足して、ざっと今から十五、六年前か。
 駅徒歩五分のそこは、ちょっと古臭いが、大学にもバイトにも行きやすいので選んだ、とある。
 見ただけで、何故かそれが俺の住んでるアパートだって直感した。
 「K」なんて頭文字の駅、どこでもありそうなのに。

 最初は何てことなかったが、あまりに頻繁に夢精するので、俺氏は段々不審に思い始める。
 ある夜、夜中に目が覚めたら、黒い影が顔を覗き込んでいた。
 思わず悲鳴を上げたが、声が出ない。逃げだそうとしても、全然体が動かない。
 金縛りだ!と焦っているうちに、黒い影が俺氏の服を脱がし、チ×コをしゃぶりはじめた……
 って、全く俺と同じだ。
 この後、どんどん行為がエスカレートしてくくだりも、殆どまんまだった。

 部屋にお札を貼っても、お祓いしてもらっても効果無し。
 いよいよ勉強もバイトも手に着かなくなった俺氏は、ケツに指を突っ込まれてイかされた時点で、「もうアカン」とアパートを引き払う決意をする。
 友人の家に転がり込んで数日過ごし、何とか親に頼み込んで引っ越し費用を出してもらって、新しい部屋に移る。
 後日、部の先輩から、あの部屋は条件が良いので、知った範囲でも借りた学生は何人かいるが、何故かすぐに出て行ってしまうという話を聞き込む。
 何故引っ越したんだ?と聞いても皆、苦い顔をするだけで、理由は絶対に言わないらしい。
 俺氏は「そいつらも同じ目に遭ったのか…」と察し、何とも言えない微妙な気分になった――というところで終わり。
 その後は他のヤツのコメントで埋まってて、「恐ろしいけど可笑しい」みたいなノリだった。ゲイAVのネタとか出して茶化してるヤツもいた。

 ――吐き気してきた。胃がムカムカして、体の震えが止まらない。
 なんてこった。こんな昔から、あの部屋、呪われてたのかよ。不動産屋め。
 ……いや。もしかしたら、不動産屋は今も幽霊が出るって知らないのかも知れない。
 引っ越したヤツが言い辛くて、幽霊が出るって苦情を伝えてない可能性がある。
 幽霊にケツ掘られそうだから引っ越しますなんて、ノンケにはなかなか言えない。恥ずかしいし。
 スレにコメつけたヤツらみたいに笑いものしたり、「欲求不満じゃねーの?」みたいな眼差しを向けてきたら、死にたくなるかも。

 しかし、あの部屋が原因らしいってのは分かったのはいいが、お祓いも効果ないんじゃあ、引っ越すしかないじゃんよ。どうやって引っ越す。
 俺は金が無い。あの部屋に越した所為で、リーマン時代の貯金は殆ど底を突いている。
 来月にならないとバイト代は出ない。出たところでたかが知れてる。生活費にするのが精一杯だ。
 金を借りられるあてもない。
 あれか、カードローンか? 消費者金融で借金か? 返済できるかどうかも分からないのに……。

 何だ。本当にどうしたら良いんだ。
 胃が痛い。マジで吐きそう。折角、肉食ったのに。
 と、取り敢えずだ。島崎ンち、泊めてくんねえかな?
 アイツ、ちょっと前に関わってるプロジェクトが炎上して、デスマーチで会社に泊まり込みって愚痴ってたから、家に居ないかも知れないけど。
 今日はこのままこのネカフェに泊まるとして、とりま島崎に「明日の夜泊めてくれ」ってメールしとこう。うん。ペちっと送信。
 ……はあ。メール見てくれっかなー。アイツの会社、仕事場には通信機器は一切持ち込み禁止って言ってたし。明日もネカフェ泊まりを覚悟しといた方が良いかな。出費痛いけど。

 けど何かこのスレ、引っかかる。忘れてることがあるっていうか。
 そういや俺氏、黒い影の人数、書いてないな。
 最初は一人ってのは一緒だけど。
 その後、過激になってくのも、「乳首舐められた」とか「扱きながら、尻の穴を舐めてくる」とか、やってることは殆ど同じなのに。
 いまいち手ぬるいっていうか、そんなにいっぺんに色々はされてないというか……。
 俺ん時より進行が遅い?
 影、増えたりしてないのか??