事故物件 - 8/10

「うわああああああああああ!!!!!」

 俺は畳の上を俯せに這って逃げようとした。
 何本もの黒い手が、真っ黒の闇から生えて、後ろから迫ってくる。太くてゴツい、男の指だ。
 ソイツが裸の俺の足首を腿を、腰を肩を腕を掴んで、逃がさないと引き戻す。
 尻を高く上げた四つん這いの姿勢を取らされる。膝を肩幅よりも広く開かれて、恥ずかしいところが全部曝された。
 腕も絡め取られて、後ろ手に捻られた所為で、体を支えるのが辛くて、腿の内側の筋肉がプルプルと震える。
 また違う掌が尻の肉を掴んで、強引に左右に開いた。

 俺はもう知っている。これから何をされるのか。自分がどうなってしまうのか。
 イヤだ、と必死で首を振りたくる。それで、許してもらえる筈もないのに。
 グッと頭を畳に押しつけられた。俺は顔を横に伏せて、泣きながら歯を食いしばる。
 誰かの手が、なだめすかすみたいに股間を揉む。毎晩オモチャにされて、すっかりヤツらに手懐けられた俺のチンコは、丁寧に扱かれてたちまち固くなっていく。
 乳首もキュッて強く抓まれて。指の腹でクニクニ転がされると、痛いのに何だか甘い疼きが乳首と下腹に凝る。
 嫌だっ!って思っても、俺の体はどんどん発情していく。

 曝け出された尻穴に、ゾッとするほど親密な粘膜の感触を感じる。
 見なくても分かる。酷く慣れ親しんだ温かさは舌だ。そいつが、丹念に皺を伸ばすように穴の縁を舐めずっている。
 尖った舌先が、閉じた穴を抉じ開けて入り込んできた。

 逃げたいのに。がっちり押さえられて、全然動けない。
 ああ、でもそれじゃだけじゃなくて。

 泣き喚く自分の声が、ヤツらに媚びるような鼻声に変わってる。
 ハッハッと大口を開けて喘いで。女みたいな、甲高いよがり声出してる。
 だって、堪らないんだ。
 熱くて、ジリジリして、腹の底が焦げるようで、気持ち良いのに物足りなくて。
 掴まれて固定されてなかったら、多分、自分で腰振ってる。
 
 もう堪んない。
 欲しい。
 もっと気持ち良くなりたい。出したい。
 腹の底の、燻る塊。じんじん疼く。
 イきたい。イかせて。

 それなのに、ヤツらはゆるゆると揉んだりさすったりするだけで、強い刺激をくれない。
 さっきから乳首も、クルクルって指先で軽く擦るだけ。
 あっ。やだやだ、そんな、なぞるだけ、やだ。
 欲しい欲しい欲しい欲しいのに足りない足りない足りない
 
 不意に、じゅくじゅくに濡れた穴に、ひんやりと濡れた肉の塊が押し当てられたのを感じた。
 舌なんかじゃない、内側に芯を持った肉の固さ。丸みを帯びた先端から溢れる露。
 俺はそれが何なのか良く知ってる。
 男の、アレ。自分の股間にぶら下がってるのと同じモノ。
 自分が唾を飲み込む音が、えらく大きく聞こえた。
 ふにゅっと先端が蕾んだ穴の縁を押す。
 やっと。
 やっともらえる。
 それ入れてっ。早く挿れて。挿れてくださいお願いします。

 俺の願いは聞き届けられた。
 固い塊がズブズブと潜り込んでいく。狭い洞窟を押し広げて、みっちりと埋め尽くす。
 やっと、やっと入ってきた。
 切ない疼きが腰全体に拡がって、俺は犬みたいに舌を突き出して喘いだ。ギンギンに勃起したチンコから汁をダラダラ垂らして、長い息を吐いた。
 大きくて太くて固い塊が、俺の躯の中心にずっぽりと埋まってる。
 これが俺のずっと欲しかったものだって、心の底から思えた。
 あ、あ。いい。メッチャ、イイ。
 俺、ケツ掘られてイってる……。

 ビクビクッて震えながら浸っていると、体内のモノが突然動き出した。
 腹を突き破りそうなくらいに乱暴に奥の奥を突かれて、入り口近くまで引き抜かれての繰り返し。尻に硬い毛の生えた誰かの下腹がガンガン当たって揺さぶられる。
 突かれるたびに、精液がビュッて出て。
 それを、熱い口が呑み込んで、やさしく包み込んでくれた。舌と唇と喉で、宥めてくれる。
 もう全身に舌と指を感じてる。舐められて、囓られて、撫でられて、掴まれて。
 何から何まで弄り倒されて、どこもかしこも気持ちヨくて、震えが止まらない。躯の奥から湧き上がってくるナニカに、頭の中まで塗り潰される。

 

 俺は吼えた。