失楽ユータナジー - 8/11

 膝頭を肩につくまで圧しつけられ、尻がシーツから浮き上がる。
 身体を二つ折りにされた所為で、肺が圧迫されて息苦しい。
 開いた下肢の間に割り込んだ男は、明良に見せつけるように双肉の狭間に屹立した牡茎をあてがった。
 キュッと怯えて窄んだ花弁を、露を含んだ剣の切っ先で、焦らすようになぞる。

(もう、いやだ……やめて……ゆるしてくれよぅ)

 震える唇が紡いだ言葉は音にならず、陸に打ち上げられた魚よろしく、はくはくと口を開閉させたに留まった。
 塞がれたように喉はひうひうと擦れた音を漏らす。
 声は、どうやっても、出ない。

 声が出せないのでは、助けを呼ぶこともできない。
 誰にも気付いてもらえない。

 視野の周縁部がすうと暗くなった。
 モノクロに沈んだ視界で、眼前にそそり立つ男の姿だけが、仄かに光を放って見えた。
 その時、世界に存在しているのは、支配者である男と明良だけになった。

 硬くてやわらかい刃先が、充血してぬれぬれと赤く色づいた肉襞を捏ね回す。
 先端から溢れてくる透明な粘液と、花弁を濡らす凌辱の残滓を馴染ませた後に、中心に狙いを定めて、グッとめり込ませた。
 既に散々に踏み荒らされて綻びかけの蕾が、圧を受けて猥らに花開く。

(――ああ)

 自分のからだがいきり立った雄を呑み込んでいく様に、明良の目は釘付けとなっていた。
 見たくないのに、目を背けたいのに、そこから視線を動かせない。目蓋を閉ざすこともできない。

 圧倒的な質量に筋肉の筒を押し開かれてゆく感覚。
 からだが慣れてきたのか、男が慣れて巧くなったのか、痛みは驚くほど少ない。
 いっぱいに詰め込まれて、奥の奥まで開かれて。
 どこか甘い疼きを伴って、重たるい感覚が腰骨の奥にわだかまる。
 それまでの性急で無遠慮な侵入とは、明らかに違っていた。

「はぁ……っ」

 肉の剣が完全に埋没したと認めた瞬間、明良の唇から吐息が洩れた。
 熱塊がふとぶととからだの中に埋まっている。
 もどかしい熱が、無関係の筈の陰茎の根元までじんわりと伝わってくるようだ。

「どうですか? 明良さん」

 男が顔を覗き込んでいた。
 形の良い唇には、彫り込んだようにやわらかな微笑が浮かんでいる。
 薄闇のなかで、明良は自分を犯している男の顔を、初めて正視した。
 端整な顔立ちは、いっそ無個性に見えた。薄い飴色の瞳はガラス玉めいて、酷くやさしいのに何の感情も伝えてこない。
 自分より五歳以上年下だと思っていたが、この男はそれよりももっと幼いようにも、あるいは自分など及びもつかないほど年老いているようにも感じた。

 不思議な気分だった。
 見ず知らずの男に監禁されて、犯されているのに。
 生命すらも危ういのに。

 妙に心が凪いでいた。