何があっても、どうなっても、それは自分の意志ではなく、強いられたのだから、しょうがない。
何もできないようにされたのだから、できなくても仕方がない。
全てが他者の思うがままに決められて、何一つ自分の意志で行えないなら、それは何一つ自分で責任を取る必要が無い、ということだ。
凄まじい開放感だった。
もう自分の弱さに苦しまなくていい。世の中の人が当たり前にできていることができない、劣等感に苛まれる必要もない。
自由のない、されるがままの可哀想な被害者でいるのは、何て心地好いのだろう。
この男の言うことだけを聞いていればいいのは、何と心落ち着くことだろう。
「んふっ、んっんっ、くふぅっ、んくう、んンッ、んうぅーーーーーっ!
絶頂の兆しの痙攣に襲われ、唯一自由になる首を振りたくって呻いた。鼻に掛かった甘声が、長い尾を引く。
足を拘束するガムテープがぴんと張って、みちみちと千切れそうなほど。
射精時の脳髄が痺れるような快感が、何度も何度も全身を駆け巡り、延々と途切れない。
こんな快感は生まれて初めてだった。
尻穴から頭のてっぺんまで、電撃で串刺しにされたようだ。
(ィいっ、イヤだこんな、ケツ犯されてイくの、凄い、ヨすぎて、男なのに、いいイィぃッ!!)
悲劇のヒロインじみて、胸中で呟く形ばかりの拒絶は既に、悦楽により甘美な風味をつけるスパイスでしかない。
眼裏に浮かぶのは、あのヒロインの淫らで美しい貌。
無様で不格好な己の鏡像に重ね合わせ、上書きする――より供犠の生贄に相応しい、可憐な姿へと。
「明良さん、凄くいやらしい顔してる……淫らで、一生懸命で、可愛い……」
彼の全てを支配する男が、甘く擦れた声で睦言を囁く。
蜜のしたたる声音と裏腹に、無残に撓められた身体に容赦なく伸し掛かり、快感の源を抉り、叩き、虐め抜く。
被虐の俘虜は、そのたびに泣き叫び、無様にのたうち回った。
声になりきれない擦れ声が、慎みを忘れた喉から次々迸る。
「ひっいんっ、あハっ、あんあン、アアッ!あっあっあっはああぁーーっ!!」
(くるしぃ、もぅイくのヤだ、イクっイくイくっ、ぃいいいっ、もうヤメロ、オク突くの、そこ、いイいいいィッ)
「もっと……もっと気持ち良くしてあげますから、ね?」
男は、それまで一切手を触れず、放置していた陰茎を掴んだ。
四指と掌は、ガチガチに硬くなった肉棒に添えるだけ。後孔を抉るピストンの動きに自然に擦られて、凄まじい高圧電流となって性感を焼き焦がす。
内と外の快感が一本に繋がって、凄まじい奔流に変わった瞬間だった。
それだけでも、胸郭から心臓が弾け飛びそうなのに。
淫汁でしとどに濡れた鈴口の、剥き出しの縦の目を、親指の腹で撫でられては。
「――――!!!!!!」
目一杯に開いた喉から、無音の絶叫を上げた。
全身の痙攣が止まらない。
業火が全神経を舐め尽くし、快感とも苦痛ともつかぬ衝撃に貫かれて、意識が浮遊する。
無数の閃光が脳内で弾けて、視界が純白の暗黒に塗り潰された。