そうして性交奴隷として犯される日々に次第に順応し、犬と呼ばれることにも慣れてきたある日。
首輪に引き綱を付けられ、槐は監禁されてから初めて部屋の外に連れ出された。
家に帰してもらえるとは、流石に思っていなかった。だが、ひょっとしたら逃げられるチャンスがあるのではないか。淡い期待が胸を掠めた。
けれど、そんな思いもすぐに萎んだ。
引き綱を持つ先導役と監視役の、男二人に両側を挟まれ、四つん這いになって歩く。
古びて黒ずんだ壁が続く廊下には窓はなく、天井の発光パネルの光も弱い。
どこか古くて大きな建物の一部らしいことだけは窺えたが、やみくもに逃げ出しても外に辿り着けそうには思えなかった。せめてここがどういう場所なのかもっと知りたかった。
進むにつれ、腹の底に響く重低音の振動のようなものを感じた――その時だった。
ドキリと心臓が踊った。
廊下の先には、見知らぬ男たちがいた。
しばらくぶりに見る、所有主である監禁者グループ以外の人間だった。
だがそれよりも槐を驚かせ、足を止めさせたのは、彼らに引き摺られるように運ばれていく素裸の人間の存在だった。
槐と同じように首輪を付けた、金髪の若い青年。傍らの男たちと違って、彼は衣服を身に着けていない全裸だった。
がっくりと項垂れ、憔悴し切った有様に、白い膚に広がる様々な色あいの、多数の痣。
よく見れば、尻から太腿にかけて血の混じった多量の精液で濡れ、乱れた髪や身体のあちこちにも白濁がこびり付いていた。
動けと命じても、槐が竦んで動かないのに業を煮やした男が引き綱を引っ張った。
首が絞まり、息苦しさに漸くのろのろと手足を運んだが、身体の震えが止まらなかった。
何を怯えてやがると叱責された。あれはお前のお仲間の犬――つまりは性交奴隷で、ちょっとしたお勤めを果たしただけだ、とも。
この日、槐は初めて自分以外の性交奴隷を見たのだった。
そして悟った――恐らく自分はここから逃げ出せないであろうことも。
直後に槐が連れて行かれたのは、男たちが「便所」と呼ぶ狭い小部屋だった。
そこは、一般に言うところのトイレ、つまりは大小便を排泄する場所、ではない。
男たちが訪れては性交奴隷を犯して、溜まった精液を排泄する場所だから「便所」なのだ。その係となった性交奴隷もまた「便所」と呼ばれた。
槐の性器には、睾丸ごと根元を縛るコックハーネスが装着された。
入り口に尻を向けて専用の台の上に上らされ、そこに首輪から伸びる鎖と手枷足枷で繋がれた。
「便所」となった性交奴隷は射精を禁じられ、尻を掲げた屈辱的な姿勢で固定されたまま、一日を過ごす。
一度の食事と僅かな睡眠時間の間だけ、台から降ろされる。
日に何人も部屋を訪れる男達は皆、公衆便所を使うように槐を犯した。時には十数人。
前を弄ってもらえず、後ろだけを徹底的に嬲られる。犯される。
彼らは性交奴隷の生理など気にしていない。自分たちがイクためにだけに犯すのだ。
愛撫などない。
いたぶるために槐の性器を弄ることもない。
性欲を処理するための道具、精液を注がれるためだけに存在する肉の器。
後始末をして去る男を流し見ながら、勃起したペニスを締め上げる器具の感触を鋭い痛みと共に意識した。
身体の内奥深くでは、抉られ続けた快楽の芯が疼いている。下肢がドロドロに蕩けて崩れそうだった。