甘い生活 - 2/4

 気が付けばクイーンサイズのベッドの上に、手首に手錠をかけられて横たわっていた。
 足も、腿と足首をチェーンで繋いだベルトで拘束されて、思うように動けない。
 服は全部剥ぎ取られて、一糸まとわぬ全裸にされていた。

「何だよこれ。どういうことだよ!」
 暗い色合いのサテンのシーツの上で、もがきながら双子に投げつけた怒声は、まだ勇ましかった。
「何って、ねえ」
 クスクスと笑い交わしながら、鏡に写したようにそっくりの対の美貌が見下ろす。耳朶に嵌ったピアスの宝石の色――名前にちなんだサファイアとルビー――以外は、見分けるすべのないほどの。
「僕たち、冬馬と仲良くなりたいって言ったよね」
「それにはまずお互いのことをよく知るのが肝要だと思ってね」
 そのあでやかな笑みを見た途端、冬馬の背筋をゾクリと怖気が走った。

「やめろっ、俺に近寄るな!」
 ベッドに膝をついてにじり寄る二人を避けようと、不自由な身体で足掻く。
「ああ――そんなに怖い顔しないの」
 見事な仕立ての絹のシャツを肩から滑り落としながら、紅司が喉を鳴らして笑う。
「そう――何も怖いことなんて無いんだから」
 相似の美貌に口接け、ちゅくちゅくと舌と唇を貪りつつ、蒼司が微笑む。
「とっても気持良くしてあげる」

 

 双子たちの愛撫は丁寧で執拗だった。
 時間をかけて丹念に冬馬の身体を開き、解し、舌と唇と指でもって快感の道筋を作り、教え込ませた。
 拒絶を許さぬ強引さと裏腹に苦痛は少なく、巧みな愛撫に冬馬の肉体は次第に快楽で蕩かされた。
 堪え切れず勃起した若い欲望を、形の良い唇が迎え入れ、桃色の両胸の尖りを指で抓まれ。
 首筋や耳に濡れた舌が這い、熱い吐息を吹き込まれながら、後孔を犯され。

「ぁあああああぁああ」
 熱されたナイフがバターを切り裂くようにやすやすと。
 執拗に解されて熟した肉筒を、肉の剣がみっしりと埋め尽くしながら押し開き、指では届かなかった奥の奥まで貫き通す。

「ん。冬馬は可愛いね。どこもかしこも初々しくって」
 目尻から溢れた涙を指先で優しく拭い、小刻みに突き上げる。決して激しくない、緩やかな律動はだが、 確実に快楽の源を揺さぶり、甘い痺れの波を呼び起こす。
「あっあっあぁあああっぁん、やぁあああぁあ!!」
 既に片割れの口淫で、射精寸前まで追い込まれては焦らされてきた性器と、指先で刺激を受け続ける乳首。双子が冬馬のからだに掘り起こしたばかりの快感の水脈が繋がり、体内で激しい奔流となった。
 これまで体験したことのない、目の眩むほどの快感が脳髄を加熱させ、目の前を白く染めていく。がくがくと痙攣し、冬馬は泣き悶える。

「気持ちいいでしょう、冬馬。女の子とするより何倍も」
 次第に深く強いストロークに変え、前立腺を絶妙の角度で抉り立て小削ぎ立てて、双子が笑う。
「初めてが僕たちで、冬馬はとても幸運だよ。最初からこんなに悦くなれるんだもの」
 ねっとりと包み込む口腔の粘膜から開放された勃起の先端を、笑いの形の唇がなぞる。同時、繊細だが力強い指がぐっと陰茎の根元を押さえて、噴き出しそうになった精液を塞き止めた。

「ヒッ、イッ、イあああああぁっ!」
 冬馬にはもうそれが痛みなのか快感なのか分からなくなっていた。唇から涎を垂らし吼える。どろどろに煮え滾って、全身が性器になったかのようだ。
「初めてなのに、そんなにきつくしては可哀想だよ。少しづつ慣らしてあげないと」
「それもそうだね。時間はまだたっぷりあるしね」
 クスクスと笑い交わす声が遠く近く聞こえてくる。不意にすっと宙に放り投げられるような感覚がして。
「いきなさい」
 その言葉が耳孔に吹き込まれると同時、冬馬は絶叫しつつ勢い良く精を噴き上げたのだった。