甘い生活 - 1/4

 いつからこんなことが続いているんだろう。
 熱く潤んだ冬馬の頭に、ぼんやりとそんな思考の断片が浮かぶ。
 カーテンが締め切られた薄暗い部屋では、時間も分からない。
 朝が来たのか、まだ夜なのか、それすらも分からなかった。

 朦朧と霞む目に映るのは、淡い栗色の髪に縁取られた、そっくり同じ二つの顔。造化の妙としか言いようのない恐ろしく整った美貌が、交互に或いは同時に、冬馬の視界を過る。
 耳に入るのは、絶え間なく響くぐちゅぐちゅと濡れたものを掻き回す水音、囁き交わすふたりの声、そして。

「あっ、あっ、あっ、あはぁっ……あぁぁあん……」
 冬馬はずっと喘ぎ続けていた。
 尻穴には、双子の片割れ――蒼司の陰茎が埋まっていて。
 熱い塊が内側の肉を奥まで抉じ開けては退いていくたびに、ぐずんと頭の芯まで痺れる快感に襲われ、冬馬の身体はガクガクと揺れて、喉から擦れた啼き声が上がった。

「凄いね、冬馬。君のなか、うねってるよ。あんなにしてあげたのに、まだ足りないみたい」
 冬馬の下肢を押し開き、リズミカルに腰を打ち付けている蒼司が、音楽的な囁きを落とす。
「冬馬は欲張りだからね。もっとして欲しいんだよね?」
 隣に横たわり、乳首を舐りながら亀頭を指先で弄っていた双子のもう一人――紅司が顔を上げ、艶(つや)やかな揶揄の笑みを零す。
「ずっと勃ちっぱなしだもの。何度出したか分からないくらいなのに」
 耳孔に舌を捻じ込み、ねっとりと熱い囁きを吹き込んだ。
「ふぅぅぅ……!」
 弄られ続けてどこかしこも敏感になった膚は、刺激に耐え切れず、それだけでぶるぶると震える。
 硬く勃起して、濡れっ放しの若茎から、また水っぽい淫液が湧き出して、腹に滴った。

 

 双子たちと初めて会ったのは、父が再婚を考えているという女性との顔合わせの時だった。
 事前に何も知らされず、一流ホテルのレストランで食事とだけ告げられて、訝しみながらも喜んで父について行った結果が、いきなりの紹介だ。冬馬には騙し討ちのように感じられた。
 母が病死してから三年。再婚相手の女性はおっとりとした優しそうな人だったが、まだ早いという気持ちは拭えない。
 貴族の血を引く美人の母親に良く似た、高貴な美貌の青年ふたりには、圧倒されるとともに子供っぽい反発心が湧いた。
 死んだ母は庶民的な人だったし、父もIT業界では有名な会社の社長とは言え、設立して二十年に満たないベンチャー企業。自分も平凡な高校生で、女子にカワイイと誂われることはあってもモテとは程遠い。何もかもが違いすぎた。
「親父が結婚するならすれば。俺には関係ないから」
 そんな拗ねた言葉を投げつけて、その日から父と対面するのを避けてきた。

 学校の帰りに黒塗りの自動車に横付けされて、仰天したら乗っていたのは双子だった。
 何が何やら分からないうちに丸め込まれて乗車させされて――いつの間にやら一緒に茶を飲むことになっていた。
 連れ込まれた先が超高級ホテルのロイヤルスイートで、しかも年間契約で借りていると聞いた時には、世の不公平さに軽くイラッとした。何故父はこんな身分違いなハイソな女性と結婚する気になったのか……と小一時間問い詰めたくなった。
 互いの親のために、新しく兄弟になる者同士仲良くしようなどという御託を聞くつもりはなかった。
 一杯飲んだら絶対に帰ってやると、にこやかに微笑む双子を睨みつけるようにして、目の前に置かれた紅茶を急いで飲み干した。
 立ち上がり、入口を探そうと歩き出したところで、急に酷い眩暈を感じ――意識が途切れた。