肉体の悪魔 - 3/3

 祭壇に両手をつき、私は僧服の上だけを羽織ったあられもない姿で犯されていた。
 遥か高みから御像の見下ろすすぐ下で、裸の尻を突き出し、喘ぐ。
 男が激しく突き上げるたび、首にかけたままの聖印が揺れて、素肌を打った。
 私は、炎の槍に背筋を脳天まで貫かれ、背を仰け反らせる。
 腹腔に突き込まれた炎の塊に食い荒らされて、悲鳴を上げ続けた。
 脳内で幾つも幾つも白が弾けて、溶けていく。

 

 確かに私は、同性に抱かれたいとずっと欲望してきました。
 私を育ててくださった教父さまに特別な愛情を抱いていると自覚してから後。
 神学校の先輩、同級生、最初に配属された慈善団体の兄弟。
 誰にも明かせず、心の中で何度も姦淫を犯してきました。
 罪を犯していることを恐れながら、告解による赦しを得ようとせず、すべて心の裡に収めて実行に移してはいないのだからと繰り返し自分に言い訳して。
 身体は貞潔の誓いを守りながら、心はそれを裏切り続けた。
 これが、その罰なのでしょうか。
 だとしたら、何と甘美でおぞましい罰なのか。

 

 私は祭壇に突っ伏して、揺さぶられるまま、朦朧と教会の中を眺めた。
 もう何度も絶頂を味わい、苦痛なほどだったが、男はまだ私の尻を犯していた。
 美々しかった祭壇も、私が放った精で涜されて、明るいところで見れば無残な有り様だろう。
 この男は、私を罰する為に現れた悪魔かも知れないとさえ思い始めていた。

 背に覆い被さった男が、耳元で囁く。
「あんたの体に飽きたら、物乞いたちに輪姦まわさせてやるよ。楽しみにしてな」
 あんなに散々達した後だというのに、その掠れた低い声を聞いた途端、ゾクリと体が震え、潤んだ頭の芯がいっそう熱くなった。
 男は思い知らせるように奥を突き上げると同時、鈴口に親指の腹をぎゅっと押し当てた。
「なあ、今あんたのココとココ、ビクッとしたぜ。そんなに輪姦まわされたいのか? ホントにド凄え淫乱だな」
 揶揄う笑声が耳穴に吹き込まれる。

「初めて見た時から、あんたを引き摺り落として、どぶ泥ン中に叩き落してやりたいって思ってたんだよ。どろどろに穢して、神サマ捨てさせてやる。チンポ狂いの雌犬にして、死ぬまで飼ってやる。な?」
 私の男、私の悪魔は、私の背後に屹立して、暗黒の愛を囁く。
「お綺麗な神父サマ。
あんたはあとどんくらいの間、神父でいられるかな?」

 ――ああ。
 私は涙を流しながらも、唇がうっすら微笑の形をつくるのを、止めることが出来なかった。

 

– end –