教会の扉は、夜でも開いている。
一時の安らぎを求める放浪者が入ってこないとも限らないし、胸に憂いを抱えた教区民が密かに告解しに訪れないとも限らない。
いつ何時誰かに見られるかも知れないという恐怖が、背徳の快感をいや増しにする。
髪を掴まれ、男の前に引き据えられた。
膝をついた私の目の前で、男はスラックスのジッパーを下ろし、なかから性器を導き出す。
視界が、男の引き締まった下腹と、か黒い茂みから天を仰いで聳える肉の塊で占められた。
「こいつがあんたの仕えるべき神だ。あんなハリボテなんかじゃなく」
傲岸に瀆神の言葉を嘯き、先端に露を滲ませるペニスを唇に突きつける。
「ほら、舐めて濡らしな。これからあんたに挿れんだからさ」
私は、屹立する肉の剣を聖体拝領のように恭しく唇に含んだ。
頬張ると、塩辛い滋味が舌先から口の中全体に広がった。
夢中で舌を絡ませ、硬い芯の通った肉塊を吸う。口中に余る大きさだったが、舌に唾液を乗せて、懸命に舐めしゃぶった。
鋼の如き硬さを内に秘めながら、生物のやわらかさと温かさを持つそれを、愛おしい、と感じる。
殊に、それが私に与える、あの何もかも灼き潰す地獄のような快楽を思えば。
「美味そうにしゃぶりやがって」
男の指が、髪の中に潜り込んで掻き乱した。
声に滲む嘲りと、しかし紛れも無い愉悦のいろに、私は羞恥とささやかな満足を覚える。
「そんだけ熱心にご奉仕できるなら、穴も自分で指入れて拡げられるよな?」
私は困惑し、口淫を続けつつ上目遣いに見上げた。
「自分のチンポを扱いて出しな。自分の汁で穴を濡らすんだよ」
からだの奥の欲望の源がズグンと疼いた。顔が燃えるように熱い。
私はどこまで貶められるのだろう。
それでも私は従った。拒否はあり得なかった。
酸のように蝕む羞恥と罪悪感に苛まれながら、それでも私は男の与える毒の蜜に溺れていく。
既に根元まで濡れそぼち、床に雫が垂れるほど昂っていた私は、握った手をほんの数度滑らせただけで、あっけなく達した。
ギリギリで何とか掌に受け止めた粘液を、二指に絡ませる。
慣れぬ手つきで、尻肉の間に指を差し入れ、後孔を探る。
「そら、口が疎かになってる」
ピシャリ、と耳を叩かれた。
熱にうかされてぼやけた世界の中で、身体がふわふわと奇妙に軽い。
「ン……ふ……」
ぐるりと縁をなぞって窄まりにぬめりを塗り込めた後、指を潜り込ませた。
最初は一本、次は二本。最初はおずおずと、次第に奔放に内側を擦り立てる。
その間も私は無心に目を閉じ、唇をすぼめて暴れる熱い器官を啜る。
私のからだの立てる水音が、しんと鎮まり返った聖堂に響いて、淫らな二重奏を奏でた。
顔を動かしながら、私は奥底から湧き上がる音楽と一体になる。
口腔の熱源と、性器と肛孔にこもった火が共鳴して、ジリジリと焦がされていく。
「……もういい」
突然髪を引っ張られて、ペニスが口からばね仕掛けのように飛び出してしまった。
私は短い失望の悲鳴を上げた。まだ彼の生命の雫を味わっていない――。
悲しみとともに振り仰ぐと、眼前に聳え立つ男は笑っていた。
その顔は、闇の中にあって目を灼くほどに眩い。
「後ろを向きな。――犯してやる」