誰が駒鳥殺したか? - 3/3

 毎日のように呼びつけては抱き、こうして週末には連中に貸し出して乱交させているが、同時にその影響で成績を落とさせてはいけないから難しい。
 並行して、以前と同じように図書館や会館の談話室で勉強も見てやっている。
 その時は、必要以上に馴れ馴れしくせずに、且つ、周囲が違和感を覚えぬ程度に変わらぬ親しさを見せて振舞うことを、自分にも相手にも厳守させた。
 こちらにあらぬ疑いが掛からぬよう、お堅い優等生の体面を保たせてやった上で、余計なことをしでかさないように素行も監視しなければならない。
 だからこそ、このゲームは面白いとも言える。下らない学園生活でも、退屈せずに済む。

 

 短いアッシュブロンドの髪を指に絡めて更に顔を上げさせ、薔薇色の唇に深く口接ける。
 口腔に舌を差し入れると、青く塩辛い味がした。
 すぐにロビンも舌を絡めて応じてきた。歯列を口蓋をなぞり、唾液を混ぜ合わせる。
 大きく唇を開いて、互いに貪欲に貪りあう。時に角度を変え、幾度も、幾度も。

 その間に、アートがラストスパートを迎え、更にストロークを大きく激しく変化させた。
 低く呻いて射精を迎えた後、荒い呼吸とともに、ロビンの細い腰を掴んで乱暴に引き上げる。
 穴からずるりと引き抜かれる感触に、ひ、とロビンが短い悲鳴を上げた。
 溢れた精液が白い腿を伝う。
 エセルが来るまでにも散々中射(だ)しされていたのか、ひかがみまで乾きかけた穢れの痕があった。

「も、オレ、一旦休憩」
 膝からロビンを乱雑に降ろし、アートは脚を投げ出して、降参のポーズを取った。リチャードからウィスキーの壜を受け取り、口に含む。
 自然、エセルがロビンを抱いて支える姿勢となった。
 腕の中で浅い呼吸を繰り返し、頬を染めて後孔を抉られ続けた余韻に震える駒鳥を見下ろす。

 子供の頃、エセルの家ではカナリアを飼っていた。
 レモンイエローの、美しい声で囀る鳥だった。
 だが、子供のエセルが何より好んだのは、このカナリアを手で掴むことだった。
 鳥籠から掴み出したちいさな小鳥をそっと握ると、やわらかい羽毛の下に、細くて壊れそうに脆い骨が息づいているのを感じた。
 熱い体温と、とくとくと脈打つ心臓の感触。
 生命をこの手に握っているという、高揚感。

 今、ロバートに感じるのは、あれと同じ感慨だった。
 他の誰でもない、自分がこの謹厳な下級生の純潔を奪って、従順な性奴に貶めた。
 規範を破る葛藤を味わわせ、恥辱を与えながら抱く時。
 他の男たちに物のように与えて犯させている時。
 自分はこの小さな駒鳥を掌中に収めていると感じるのだ。

 

「どうすんの。エセル、ヤる?」
 クラレンスが椅子から身を乗り出し、上目遣いで見つめてくる。そろそろ一発抜きたくなったのだろう。
「いや。さっきまで物理のグリンフィールド先生に付き合わされててね。まずは一服してからにしたいな。
好きに続けてていいよ。ほら」
 肩を竦め、腕の中の裸の小鳥を、クラレンスに向けて突き飛ばす。
 蹌踉いたロビンは、あ、と小さく声を上げて、待ち構えていたクラレンスに抱き止められた。
 クラレンスはそのままロビンを絨毯の上に押し倒し、細い身体を二つに折り曲げて圧し掛かる。
 前戯要らずの濡れてほぐれた穴に、すぐさま突っ込んで性急に腰を振った。
 広い肩に担がれた棒のような足が、突かれる動きにあわせてゆらゆらと揺れる。

 エセルは、絡み合うふたりの真ん前の椅子に陣取った。
 ゆったりと脚を組んで腰掛け、銜えた煙草におもむろに火を点けた。
 紫煙を唇から細く吐きながら、手飼いの駒鳥が手荒い凌辱を受ける様を眺める。組み敷かれて悶える駒鳥を見下ろす。
 ロビンは、色づいた唇から絶えず嬌声を洩らし、端整な顔を歪めて忘我の境を彷徨っていた。
 じゅぶじゅぶと淫猥な水音が、結合部から聞こえてくる。

 その音と、幼い貌に似合わぬ濃艶な色香にそそられたか、対面の長椅子に寝そべっていたパーシーが、ごくりと唾を飲み込んだのが分かった。
 慌しく煙草を揉み消すと、そそくさと椅子を立って、ロビンの顔の横に屈み込む。
 ボタンを外して、まろび出たペニスを喘ぐ口元に押し付けた。
 急に唇に突きつけられたものに、ロビンは最初驚いたように呻いたが、すぐにうっとりと蕩けた表情で銜え、顔を横に向けて一心に吸い、舐めしゃぶり、裏筋に舌を巻きつけて奉仕を始めた。

「んふ……んンっ、あふ……ふ、ンン」

 鼻に掛かった甘い吐息が、口淫の合間に断続的に零れる。
 幾重にも穢されて、淫らに啼く小鳥は、背筋が震えるほど美しい。
 冷たく装った無表情の下に、滾るような情欲を隠して、エセルは視線で掌中の駒鳥を愛でた。

 

– end –