残照 - 2/3

 苦行の時間が過ぎた。
 男が奇声を放ったかと思うと、下腹部に少年の顔を押し付けた。
 熱い液体が口腔で弾け、塩辛い味が広がった。くぐもった呻きが洩れ、拘束されて身動きならない四肢がそれでも跳ねる。
「おいおい、窒息させんなよ」
「構わねえだろ、こんなガキ」
 仲間が苦笑するのも構わず、最後にもう一突きし、男根を引き抜いた。
 やっと解放されたアイは、酷く咳き込み、嘔吐した。唾液や胃液の混じった白濁を地面にぶちまける。嘔吐くたび、喉がヒリヒリと痛んだ。

 アイは固く目を閉じ、ぐったりと項垂れて、ならず者に両側から肩を掴まれて支えられていた。
 口元から顎、荒い呼吸に上下する薄い胸まで、吐いた精液で汚れている。
 悪態をつく気力はもう無い。弟の無事を確かめる余裕すら無い。
 そんな少年を見て、ゴロツキのひとりが舌舐めずりした。

「それじゃ俺は、こっちをいただくとすっかな」
 尻肉を掴んで開き、薄茶色の蕾を露わにする。少年が異変に気づき、うっすらと目を開けた。
 男は手指を口の中でたっぷり湿してから、肛門に押し込み、唾液を窄んだ襞に無遠慮に塗りつけた。
 湿り気があるとは言え、ざらついた太い指先に蕾を押し開かれて、アイは身を竦ませた。
 囚われの獲物には、何をされているのかよく見えないだけに、余計に恐怖が募る。
 胃がじわりと痛む。また吐き気がしそうだった。

「こんくらいでいいか」
 蕾を押していた指が去り、ホッと安堵したのもつかの間。
 滑らかでぬるつくものが当たった、と感じた次の瞬間。
「ぃギっ!!」
 熱い杭がめり込む衝撃に、アイの身体が硬直した。
 男が自分の肛門に男根を突き立てて、捩じ込もうとしているとは分からない。
 だが、背を丸め、身体を二つに裂かれるような激痛から逃れようと、地面に爪を立てた。
 その腰を両手で掴んで引き寄せ、背後の男はアイに覆いかぶさった。
 塗りたくった唾と先走りの僅かなぬめりしか、挿入を助ける湿り気がないのに、肉杭を容赦なくグイグイと隘路に押し込んでくる。
 まるで太い杭に脳天まで串刺しにされたような衝撃だった。侵入物が肉筒を押し開いて進むごとに、骨盤がギシギシと軋んだ。

「いっ痛っ、あァああっ!!はぁぁっ、あっああァアあっ」
「おっ処女膜貫通かあ?」
「マクなんかねえじゃん。コイツ男なんだし」
 喉から絶叫を迸らせ、涙さえ浮かべて虚しくもがく少年を見て、周囲がどっと湧いた。
「あー……あったけえなあ。久しぶりだぜ、生穴はよぅ!!」
 うっとりと呟いて、強引に根元近くまで収めると、激しく腰を動かし始めた。
 潤いの足りない粘膜が引き攣れて、鋭い熱痛が襲う。

「はぁ…っ、はぁっ、あああぁ、うぐぅぅ」
「おほっ、イイ締め付けじゃねえか。ガッツリ喰いついてきやがる」
 凌辱者は、抜き差しのたびにアイの身体が跳ねるのも構わず、ガンガンに腰を使い、乱暴な抽送を繰り返した。パンパンと尻肉を打つ乾いた音が無情に響く。
 無理やり開花させられた蕾が裂ける鋭い痛みに、内臓を内側から乱打される鈍痛が加わり、アイは悲鳴すら上げられず、身を強張らせて耐えるしかなかった。

 なのに、それさえも許さぬように、背後の男は少年の薄い腰骨を押さえて、深奥を突き上げてくる。
「もっと力抜けや、奥まで突っ込んでやっからよう!!」
「あっ、あはぁあぁっ、ぐううっ……!」
 男が腰を打ち付けるたび、苦悶に歪む頬が砂まみれのアスファルトで擦れて、血が滲む。
「早くしろよ、後がつかえてんだからな」
「わあってるよ、もうちょっと待てって……おっ、クるっ」
 程なくして男は射精した。熱いとろみが最奥で弾け、腸壁を打つ。
 男が萎えたモノを引き抜くと、大量の精液がごぽりと濁った音を立てて穴から溢れ、腫れ上がった粘膜を酸のように焼いた。
 鮮血の赤を交えた白い汚濁は尻を汚し、腿を伝って流れ落ちた。

 

 その後はもう、デタラメだった。
 暴漢たちは、少年の身体を好き勝手に弄び、直腸と口腔を凌した。
 常に男根が体内で暴れ回っていて、空いたと思ったらまた次が侵入してくる。

「そうそう、良い子にしてりゃあいいんだよ」
「いい顔するようになったじゃねえか。もういっちょまえのメスだな」
 平らな胸にほんの少しだけ浮いた、小さな粒をグリグリと指の腹で躙る。
 男たちの指ほどの長さしか無い、皮を被ったままの陰茎も暴虐を免れず、強引に表皮を剥かれ、擦り立てられ、尿道口に爪を捩じ込まれた。
 その度に細い肢体は跳ね、男たちの嘲笑と濁った欲望を浴びせかけられた。
 
 ふと気が付くと、いつの間にか弟がすぐ傍に寝かされていた。
 群がる男たちの肉体の隙間から見えた、ユウは押し潰された蛙のような格好だった。
 無残に開脚させられた脚の間で、ゴロツキの一人が一心不乱に腰を振っていた。
 弟は白目を剥いて揺さぶられるままで、意識があるのか無いのかも分からない。
 幼い顔は土と血に汚れ、前髪にこびりつくほどべっとりと白濁に塗れていた。

 ずどんずどんと内臓を殴りつけてくる律動に揺さぶられながら、自分と同じだ、と思った。
 からだの内側が火に焼かれたようにひりついて、軋む。下半身は殆ど麻痺して、自分の体でないような気がした。
 嵐のような暴力が去るのを、一心に願うしかなかった。