裸の季節 - 2/2

 顔を真っ赤に染めた少年が、座卓の上にぐったりと頽れた。
 じっとりと汗をかいた細い肢体が、天板の上でヒクヒクと痙攣する。
 うっすら開いたアヌスから、濡れた音とともに白い汚濁がひり出された。

「トロットロだねー」
 男は手元にスマートフォンを引き寄せ、カメラアプリを立ち上げた。
 口の周りを唾液と精液で汚し、陶然と目を潤ませた少年の顔と、白濁まみれの下肢が綺麗に収まる角度を探しては、楽しそうに何枚も撮影する。

「あーこの子マジ凄えな。全ッ然萎えない。もう一発くらい、ヤりたい感じ」
 とっとと汗の滲んだ服を脱ぎ捨て、床にどっかりと腰を下ろした茶髪の青年が、ティッシュで股間を拭いながら感嘆する。
「夕方までまだだいぶ時間あるし。あと二、三回ヤれんじゃない? 槐は6時までに帰ればいいんだよねえ?」
 男は、同意を求めるように少年の顔を覗き込んだ。
 黒い瞳が僅かに焦点を結び、ぼんやりと見上げた。顎がほんの少し持ち上がる。
 それを同意と取り、男はスマホを置いて少年の腕を取る。
 あ、と艶めいた吐息が、子供そのものの小さな唇から洩れる。

「じゃ、さっさと済ませちゃおうね。槐も、せーし、どぴゅっとされるの、好きでしょ? なかにいっぱい出してあげるね」
 すっぽりと収まる華奢な体を膝に乗せ、半勃ちのペニスを暫く薄い尻肉の狭間で擦って育ててから、おもむろに後ろから貫いた。

「あっ、はっ、ぁあ、あ……っ」
 少年の、半眼に閉じていた瞳が、丸く見開かれた。背が反り返り、舌を突き出して喘ぐ。
 男は笑いながら、面白いようにびくびくと跳ねる肢体を押さえつけ、小刻みに下から突き上げる。
「ひん、いっ、あっ、あはぁ、ぁ、あん」
 甲高い嬌声が、細い喉を突いて、後から後から飛び出す。
 ふっくらとした唇が、唾液でぬらぬらと光っていた。

「槐、抱っこで奥、ズコズコされるの大好きだよねえ。乳首もコリコリする?」
 返事も待たず、男が平らな胸に桜色に芽吹いた尖りを二指で摘む。
 少年の全身が小刻みに痙攣し、白い喉を晒して喘いだ。
「はぁぁ、あん、あっんっ、むねっ、やっ、ぁあぁぁあ」
「んっ、すっごい締まるっ……」
 余程締め付けがきつかったのか、男もぎゅっと顔をしかめ、一層深く細腰を捕らえると、メチャクチャに上下に揺すぶった。

 それまで傍観していた茶髪の青年が、ゴクリと唾を飲み込んだ。
 背面座位で犯される少年から、目が離せなかった。
 色白の膚が、胸や肩までほんのりと桜色に染まり、快感に打ち震えている。
 少女と見紛う可憐な顔が、絶頂の陶酔を浮かべて、痛苦を堪えるかのように引き歪む。
 棒きれのように細い四肢は、女体のまろやかさも、男の体の無骨な力強さもまだ備えていない。
 その無垢が蹂躙され、どぶどろの情欲に浸される被虐の美。

 無意識に立ち上がっていた。
 視線は少年の痴態に釘付けになったまま、引き寄せられるように近付いた。
 鋭い仰角を見せるペニスを握り締め、少年たちの正面に立つ。

「あ、口使う? じゃ、ちょっと待って」
 気が付いた男が、近くに転がっていたクッションを引き寄せ、自分の後ろに置いた。
 男が位置を調節し、少年を腰に乗せたまま、ゆっくりと背を倒そうとしている間に、茶髪の青年は、少年の頭を鷲掴みにする。
 ぐいと引き寄せて、強引に咥えさせた。
「ぅぶ」
「ちょ、そんな強く引いたら抜けちゃうって」
 慌てて男が起き上がり、文句を言うが、青年の頭にはもう涙目で見上げる少年の、紅潮した顔しか見えていない。

「舐めろよ」
 欲に昂った掠れた声で命ずると、少年は濡れた睫毛を伏せた。
 青年にとっては意外なことに、従順に小さな唇に押し込まれた肉棒を吸い、丹念に舌を這わせる。
 口腔は熱く、舌はやわらかく、唇は肉に吸い付くようだった。
濡れた粘膜に包まれる悦楽に、茶髪の青年はうっとりと目を細めた。

「しょうがないなー」
 苦笑いした男が、抽送を再開する。
 その衝撃に少年が、ふ、と呻いて硬直し、一瞬口から男根を取りこぼしそうになった。
 後頭を捉えた青年が無理矢理に突き込み、未成の身体が二人の男の間で綱引きのように押し引きされる。
 二人ともに少年の体を掴んで離さず、苦しげに噎せるのも構わず、犯し続けた。

 

 

「じゃあ、俺、槐を途中まで送ってくから。帰ったら飲み行こう」
 玄関口で、男が爽やかに笑った。
 ああ、と茶髪の青年は、頷いた。
 その目は、男に肩を抱かれて立っている、少年のほうを向いている。

 伏せた黒い瞳は、まだ茫洋と夢の中にあるように虚ろだったが、立ち姿のどこにも、さっきまで二人がかりで犯され、散々に乱れたダメージが残っているようには見えない。
 子供って意外に回復早いのな、などと益体もないことを呟きながら、ボリボリと腹を掻いた。
 と、蚊の鳴くような声が聞こえた。

「せんせい」

 見れば、少年が、傍らに立つ男のシャツの裾を、小さな手でぎゅっと握りしめていた。
 俯きがちの顔に浮かんだ表情は、見下ろす青年には切ないとも物憂いともつかぬ。
 だが、それだけで分かるのか、屈み込んで少年と目線を同じにした男は、ふと思いのほか優しい笑顔を浮かべて、少年を抱きしめた。
 最初は唇を啄む小鳥のキス、次第に深く、舌を絡め、互いに貪るディープキス。
 角度を変えては何度も濃厚な口接けを繰り返す二人を唖然と見つめていたが、バカバカしくなって居間に戻ることにした。

 部屋は散らかっていた。
 さっき、少年を風呂場に連れていってシャワーを浴びさせている間に、使用済みティッシュの類いは捨てて、垂れたり飛び散ったりした汚れはあらかた拭いておいたが、それ以外の、最初に座卓から落とした物などはどうしようもない。
 こもった臭いを散らすために開け放った窓からは、涼しい風が吹いて、カーテンを揺らしている。
 外はまだ明るいが、床に落ちる影は随分と長くなっていた。
 冷蔵庫から勝手にペットボトル入りの麦茶を取り、コップに注ぐ。
 渇いた喉には、冷えた茶は随分と美味く感じた。

 あの子は、「せんせい」と呼ぶあの男と、恋人のつもりなんだろうなあ、と声に出さずに呟く。
 友人である青年には分かるが、男にはそんな気は毛頭ないだろう。
 目をつけた子をレイプするだけでは飽きたらず、前々から可愛い子を調教して性交奴隷にしたいと言っていた男だ。
 精々が、やっと手に入ったお気に入りの玩具といったところだろう。

 可哀想に、と独り言つ。
 もし次もヤらせてくれるなら、極太バイブを入れてみたいなと思いながら、青年は麦茶を飲み干した。

 

– end –