淫獄星 - 2/2

 体内を暴れまわる異物の感覚は、この星に来てからの数週間で馴染みのものとなった。
 鉱山労働でなく、慰安労務に服するよう命令されて、他の囚人から隔離された獄舎に収容されるまでは、そんなに深刻な疑念などなかった。
 元々、深く思慮などしてこなかったから、悪い仲間に流されるまま重犯罪を犯してしまったのだ。
 「慰安労務」の内容を説明されないまま、刑務官からおざなりに腸内洗浄の仕方を教えられ、それが何のためか悟るより先に労働時間が来て、囚人たちに輪姦された。

 与えられたばかりの囚人服を剥ぎ取られて全裸にされ。押さえつけられてアヌスに指を突っ込まれた。
 慣らしもそこそこに、それまではただの排泄口でしかなかったアヌスにペニスを捩じ込まれる。
 みっともなく泣き叫ぶ口にもペニスを突き入れられ、涎を垂らして嘔吐く間も喉奥を蹂躙された。噛んだら歯をへし折ると脅されて、舌で舐め、肉茎を吸いさえした。
 最初の凌辱者たちがセリンの直腸と口腔内に精液をぶちまけた後も、苦痛と恐怖の時間は終わらなかった。入れ替わりに、違う男たちがセリンにペニスを突き立て、穴を塞いだ。
 最初の労働時間が終わった時には、セリンの全身は男たちの放出した大量の精液にまみれていた。
 長期に渡る収容で荒んだ囚人たちの性欲のはけ口となること。それがセリンに課せられた労役だった。

 その日から毎日、休憩を挟んで一日三回、囚人たちに輪姦された。
 一人の慰安係の担当する囚人は、一日あたり二十人程度。
 セリンは平均的な容姿だが、体毛が薄く、まだ若かったので、囚人たちは喜んで彼に群がった。何より、変化のない囚人生活では、目新しいというだけで価値がある。
 異性愛者で、男性との性交経験がなかったために、アヌスが使い込まれていないというのも歓迎された。
 囚人の大半は自身の快楽にしか興味がなく、乱暴にセリンを使うのみだが、中には受けを前立腺刺激でイかせ、その反応を愉しむ者もいて。
 最初は苦痛しか感じなかったセリンも、次第に受け身の快感を覚えるようになった。

 数週間経った今では、挿入されただけで条件反射のようにペニスが勃起するようになっていた。
 並んだ瘤が薄い腸壁ごしにゴリゴリと前立腺をこそげていくと、刺激に慣れたからだは容易く熱を生む。会陰からペニスの先まで震えが走る。
「おッ、ほぉおっ、おぉお……ッ」
「おい、こいつ、こんなにメチャクチャに突かれてんのにチンポおっ勃ててるぜ」
 四つん這いの腹の下の、すっかり勃ち上がったペニスを面白半分にぐいと握られ、しっかり掴まれて動かぬ腰がそれでも跳ねた。
「よっぽど男好きなんだろうよ。淫乱な淫売にゃあここも天国だぁな」
 揶揄に違うと否定したくても、今のセリンには叶わない。乾いた精液のこびりついた頬に、また一筋涙の線が引かれた。

「もう待てねえよ。あんただけ愉しむなんてずるいぜ」
「まあ、そうがっつくなって、もうちょっとで出る、から……よッ」
 背後の男がストロークを深め、更に激しくメチャクチャな動きで内臓を抉り始めた。
 串刺しにされたセリンが、口を塞がれながらも吠える。

「むふぉっ、ほおっ、おぉおおおっ……!」
「おッ、出る……!」
 動きを止めた男が、指がめり込むほど強く臀部を掴む。
 掴まれた箇所には、同様にして内出血を起こした痕が、皮膚に赤黒い花となって幾重にも折り重なって刻まれていた。
 程なくして、腫れ上がった花弁に、咥え込まされた巨根が、腸内に精液を送り込む蠕動が感じられて。
「まだまだ出るぜ……腹ン中、いっぱいにしてやっからな……ッ」
 これで最後と奥に突き込まれると、ビュクビュクと、新たな汚濁が腸を満たしていくのが分かる。

「1巡目の奴らの使い古しの割にゃあ、なかなかいい具合だったぜ」
 そう嘯き、萎えたものを引き抜くと、ポッカリと開いた穴から、どろどろの白い濁りが溢れて、湿ったシーツを更に濡らした。
 みっしりと内部を埋めていた肉杭が退いていく道すがら、また前立腺を擦られ、セリンは小さい悲鳴を上げた。
「ぅ、ひゅぅ……っ!!」
 ガクガクと腰が震え、頽れようとするのを、顔を下腹に押し付けて止め。
「こっちも出るぞ!ひと月分、たっぷり溜めた濃いーい汁だ、味わって飲めよっ、オラぁ!」
 男は喉奥に欲望の奔流を迸らせた。

 口の端から白濁混じりの涎を垂らし、ヒクヒクと痙攣するセリンがベッドに横たわっていたのは、ほんの一瞬。
 脱力した下肢が割り広げられ、先走りで根本まで濡れたペニスと、精液まみれの腫れたアヌスが晒されたかと思うと、新たな怒張が深々とぶち込まれた。

「あっ……おぉ……っ」
「こぼさねえように栓をしてやらねえとなっ……と」
 背を反らして硬直するセリンの上に揶揄する声が振り、濡れたものを掻き回す水音と肉を打ち付ける音が、両脚の間から高らかに響く。
 当然のように、上の口もいつまでも開いたままではいられなかった。
 髪を掴んで頭を持ち上げられ。無理やり捩じ向けられた鼻先に、精臭に慣れた身でもきつく感じられるほどの悪臭を放つペニスを突きつけられた。
「ははは早く、しししゃぶれっ!ここここのいいい淫売」

 ああ……とセリンの胸に諦念が浮かぶ。
 犯した罪を悔いるという主体性すら無い青年は、与えられた罰を素直に受け入れた。
 自ら唇を開き、肉楔を受け入れると、拙い動きでゴツゴツした表面に舌を絡め、恥垢の溜まった亀頭を無心に吸った。

「あんなでかいのが入ったんなら、もう一本くらい入るんじゃねえか?」
「俺のイチモツは隙間できるほど小さかねえよ。黙って順番待ってろよ」
「もう我慢できねえ!手ェ出せ、男なら擦り方ぐらい分かんだろ」

 無理やり折り曲げられた身体は軋み、筋と骨が悲鳴を上げる。
 擦られ続けた粘膜が、じんじんと熱を持ってひりつく。
 苦痛を和らげるために、セリンは僅かな快感の粒を拾ってそれに溺れた。

「ぐふっ、ぅふぉっ、むぅうう……っううっ」
「しっかりケツ振れ、売女!」
「へえ、突かれるたびにチンコからピュッピュ汁出てるぜ。ホンマモンの淫乱だな」
「ケツ掘られて悦い気持ちになってりゃあいいんだから、こいつら慰安係は気楽なもんだぜ」
「まったく、ベッドに寝っ転がってるだけでお務め果たしたことになるんだからよう。いいご身分だよなァ。一ン日中穴ぐらン中で汗水垂らして働いてる俺達とは大違いだ」

 

 2巡目の労働時間の終了まで標準時で2時間以上、全員に最低二回は犯されるだろう。
 失神するように仮眠し、僅かな休憩を取れば、また労働時間が来て、3巡目の囚人たちを相手にすることになる。
 毎日、ろくに喉を通らない食事を刑務官に無理やり飲み込まされて、疲れ切って泥のように眠って。また起床時間が来れば、輪姦され続ける一日が始まる。

 刑期は18年だが、セリンはそんな遠い先の未来を思い描けない。
 耐え続ければ、いつかこの淫獄から開放される日が来るかも知れない。そう夢想することすら遠すぎて、過酷すぎる現実に摩耗していく。

 慰安係に配属された囚人のほぼ全員が、他の労役に配置転換される前に、肉体的あるいは精神的な傷病から、長くとも二三年のうちに死亡することを、彼は知らない。

 

– end –