御饗(みあえ) - 3/3

 水神は、喘ぎに胸を波打たせる童子の脚の間にその身を割り込ませ、衣の前をくつろげた。
 はだけられた純白の衣の下から現れたのは、びっしりと棘状に鱗を生やした、巨大な陽物。
 逆棘を振り立てて、おえかえったそれを目の当たりにして、虚脱していた狭霧の顔が引き歪んだ。
 崇敬の対象である里の守り神にしては、あまりにもおぞましく、禍々しい異形。
 一片の言葉もなく恐怖に凍りついた童子に、白い影が覆いかぶさる。
 大きく割り開かれた下肢の奥を、暴悪な兇器が一息に貫いた。
 
「ぃぎゃあああああああ!!」

 狭霧の背が反り返り、喉からは絶叫が迸った。
 灼熱する杭を打ち込まれたような熱痛が、体の中心を裂いて脳天まで走る。
 逆棘に覆われた兇悪な剛直が、未開の蕾を穿ち、無残に引き裂いて蹂躙する。
 破瓜の血が、赤い花びらとなって童子の白い腿に、敷き散らした衣に散った。

「おう……狭い、が、やはり人の子の肉は温かい」
 神は白目を剥いて痙攣する贄の身体を押さえつけ、ゆっくりと、だが容赦なく根元まで納めて、串刺しにした。
 童子の後孔は、女の腕ほどもある逸物を呑み込まされて、薄い皮膚が限界を超えて伸びきり、裂けて血を流していた。
 やわらかい内側の肉も、棘鱗によってずたずたにされているのは明らかだった。

 痛みに硬直した体は浅い呼吸を繰り返し、薄い胸が激しく波打つ。
 その淡い桃いろの頂を、妖しの神の長い舌が巻きつき、捏ね回す。
「詰まらぬのう。もそっと良い声で鳴きやれ。それ」
 鱗を逆立てた陽物がずるりと引き出され、すぐさま奥の奥まで捻じ込まれる。
 肉筒の内部を棘がやすりのようにごりごりと刮ぎ、隠された快楽の源までを抉ってゆく。

「うぁ……あくっ……ヒッ、ィギい、」
 激しい抽送に、力を失った四肢が揺れる。
 血にまみれた兇器が抜き差しされるたび、童子の唇から苦痛の呻きが上がった。
 けれども、そこに甘い響きが混じるのは。
 
「イひぃいっ、ひぃン、んんんン」 
 腰の奥から湧き上がる熱。内側の、快楽の源が押し上げられるごとに弾けて拡がる。
 圧倒的な苦痛と快楽を一度に味わわされた童子の身体は、激しくがくがくと揺れた。
 すべらかな頬から胸にかけてが、淡い薄紅に色づいてゆく。
「ひぅっ、あはぁぁあっあっあっあああ」
 大きく開いた唇から唾が溢れて、細い顎を伝った。幼い美貌は流れ出る涙と涎でぐちゃぐちゃに汚れていた。

「ほ。早くも味を覚えたか。さても淫らな童子であることよ。佳(よ)き鳴声、好(よ)き顔じゃ」
 もはや偽る用無しと見たか、神はゆるりと変化を解いた。
 纏った白い綾錦は白の鱗に。均整の取れた肢体は、足を欠いて細長く。
 本来の姿である蛇体に戻り、その白い鱗に包まれた長い体を贄に巻きつかせた。
 とぐろ巻いて背後から貫き犯しつつ、伸びた首を童子の脚の間に潜り込ませ、幼い玉茎を貪る。
 後孔からの刺激で硬くそそり立ち、先端から絶えず蜜を溢れさせる若茎を、口腔に含んでなぶり抜き、樹液を啜った。

 

 ――そして半月ほどが経ち。
 ぬちっ、ぐちゅっ、と粘り気のあるものを捏ね回す音が、今日も洞の中に響く。

「はぁぁっ……しろたへさまぁ……ああぁあああ……」
 狭霧は蕩け切った顔で喘ぎながら、叫び続けて擦れた声で、お仕えする神の名を呼ぶ。
 ほっそりした全身に蛇身が巻きつき、太い男根が深々と尻穴を貫いている。
 狭霧の白かった膚は、幾度も流れた様々な体液で斑に染まっていた。
 今も、血と精液の乾きかけた痕の上に新たな血の筋が伝い、複雑な網の目を作った。

 神に捧げれらた祭りのあの夜より、童子の尻穴には常に妖神の男根が埋まっていた。
 蛇身となった神は、眷属たる蛇と同じく二本の陰茎を持ち、それを交互に、或いは一度に挿し入れて、丸一昼夜、時には数日をかけて嬲り尽くした。
 なかなか射精に至らず、また一度で満足しない為だ。
 のみならず、抜いたと思っても、すぐさまもう片方が入り込んで穴を塞ぐ。
 凌辱は、このまま果てしなく続くと思われた。

「もう、ゆるひ、イぃっ、いいぃっ、お、ぉねがいひぃっ」
 ゆらゆらと鎌首もたげて見下ろす神の美貌を、虚ろな瞳で見上げて懇願する。開きっぱなしの口から、だらだらと涎が溢れて止まらない。
 まともな思考はとうに消え失せ、「白妙様」への服従を徹底的に仕込まれた片鱗が残っているのみ。

「まだまだ。ちと搾り過ぎたからのう。濃い精のできるまでは暫しこのままじゃ」
 蛇神は薄く笑み、蜜に濡れて物欲しげにひくつく鈴口を爪の先でなぞる。
 そこは、一日に渡って続けざまに射精させられた後、妖神のちからで閉ざされ、精を吐き出せなくされていた。
 僅かな刺激なれど、散々犯された上に数日吐精を禁じられた身には猛毒。
 反射的にどろどろの穴に穿たれた陽物をぎゅうと締め付けてしまい、また絶頂を味わって。限界を超えて苦痛に変わった快感に咽び泣く。
「あ、あ、あ、あ、あはァッ、ああああああぁ……」
 犬の如くに舌を突き出し、細腰を力なくゆらゆらと揺らす。
 棘だらけの陽物が自重で奥深く打ち込まれるたび、開ききって裂けた菊花からまた鮮血の花びらが散った。

 内臓を傷つけられる痛手を負わされながら、狭霧がまだ生きているのは、妖しの神の為せる技。
 里に豊かな実りを与える、再生と生長の力が、交わりを通じてあわれな生贄にも分け与えられていたから。
 故に狭霧は、蛇神の精を受け止めるたびに癒され、犯されるごとに瀕死の傷を負わされるを繰り返していた。
 媾合が続く限り死なず、また死ねないまま生かされ続けるのだ。

 洞のすぐ外の滝壺の底には、白い骨がごろごろと群れを成して転がっている。
 蛇神に精を貪られ、飽きるまで犯しぬかれた童子の末路。
 癒しの力も効かぬほどボロボロに擦り切れて果てるか、厭かれて血肉も貪り食われるか。
 何日後か、何ヵ月後か、何年後か。七年後の祭りに、新たに生贄の童子が運ばれてくるまでか。
 どのみち、狭霧がそれを知ることはないだろう。
 人の身に過ぎたる快感と痛苦に晒され続けて、人の子がそう長く正気を保てる筈もない。

 

 谷の村人たちは、此度の童子もまた無事に受け入れられたことを知り、七年間の豊作が保障されたことに安堵して、「白妙様」に感謝を捧げた。
 神主はまた次の七年間のために童子を選び、育て始めた。
 狭霧がことは、皆すぐに忘れ去った。

– end –