御饗(みあえ) - 2/3

 白い神の腕(かいな)に抱き取られて、運ばれた先は峻厳たる滝の、水の御簾の裏に隠された洞窟。
 冷涼とした岩室に設えられた薄絹の帳の奥の奥から、か細い悲鳴が上がる。
 臥所にゆらと揺らめく明かりは、灯火ではなく蒼白い燐光。
 それが、床の上に散り敷かれた衣と、蠢くふたつの影を照らして。

「あっ……ああっ」
 素裸に剥かれた身体に、かろうじて白絹の衣を纏わりつかせ、狭霧は身を捩った。
「お、お許しくださいませっ」
「ふふ。何とも初々しいこと」
 露わになった平らかな胸乳を見下ろし、白き神が笑う。
 無垢な童子の困惑を楽しむかのように、残忍な愉悦を口の端に浮かべて膝に手を掛け、下肢を押し開く。
「此処もほんに愛らしい。使い込まれておらぬと見えて、綺麗な薄紅色じゃ」
 暴かれた隠しどころ。しんなりとした幼い茎と、慎ましく閉じた蕾。まだ下生えすらもないそこに、ねっとりとした視線が絡む。
 仄かに赤みの差していた狭霧の頬が、更にはっきりと朱に染まった。

「な、何を、」
 なされますのか、と問うのを遮り、神は白い面を下腹部に寄せたかと思うと、ぬれぬれと赤い唇で幼い若茎を含む。
「……ひっ、ぃ!」
 温かく湿ったものに包まれる感触に、狭霧は息を呑み、身を硬くした。
「そ、んな……汚うございますっ、あっ……ああっ」

 自慰も知らず、陰茎は尿を排泄する器官という知識しか持たぬ清童には、今自分が何をされているのかも理解できず、仕える神から与えられる刺激に、ただただ翻弄されるばかり。
 朱唇が容赦なく吸わぶり、舌を絡めるのを、足を突っ張らせ、目をぎゅっと瞑って必死に耐える。
 抗うことすら思いつかぬ童子の指が、行き場なく白衣を揉み絞った。
 程なくして、昂る熱が下腹を震わせ。
「あっ、あっ、あっ、ああぁぁ――っ!!」
 白い樹液を神の口中に吐き出し、精通と初めての絶頂を同時に迎えた。

 白い妖神は美味そうに喉鳴らし、童子の精を尿道に残った最後の一滴まで吸い上げて、余すところなく飲み干す。
 垂れかかる白髪の影で、三日月の唇ちろり舐めた舌先は、ふたつに割れて。
「なかなかの甘露、これならば良き糧になりそうじゃ」
 満足げな呟きも、顔面蒼白となった狭霧には聞こえない。神の口に不浄のものを出してしまった不敬が恐ろしくて、眦に涙を溜めて、ただただ打ち震えるばかり。
「し、白妙様、おっ、お、お許しを……っ」
 が。

「え、あ」
 下肢を更に深く、両膝が肩につくほど折り開かれて。
 二叉に先割れした長い舌が、童子の肉の薄い臀(いしき)を割りさき、露わになった菊蕾を突き刺し、舐る。
「ひぁっ、やぁぁ……っ」
 今まで意識したこともない、花弁をかたちづくる皺の一つ一つまで、執拗に生温かい舌先でなぞられ、ぞわぞわと背筋に怖気が走る。
 必死に脚を閉じようとするけれど、腿を押さえる手はびくともしない。
 濡れたものが蕾の内側に潜り込む感触に耐えられず、涙が頬から伝い落ちた。
「おゆるしください……おゆるしくださいませ……」
 
「何故泣くのじゃ?」
 怪訝そうな声とともに、弄る舌先から開放されて安堵したのもつかの間。
 長く冷たい指が濡れた蕾を押し広げ、内側に入り込んできた。
「ぃぎっ……?!」
 ぎくりと跳ねる身体を押さえつけられ、若茎を掴まれた。しっとりと冷たい掌が、先ほど初めて精を放ったばかりの茎をやわやわと嬲る。
「泣くほど良いのか?ならば、もっともっと良うしてやろう」
「痛ぁい……おねが……おやめ、くださ……」
 いやいやと首を振っても、指は容赦なく狭い肉筒を抉じ開けて、内部をまさぐる。後孔を荒らされる激しい異物感に、狭霧は口を押さえて幼子のように泣きじゃくった。

 その間も幼い玉茎を揉み擦る老練な繊手は止まらず、童子が知り初めた喜悦を教え込む。
 堪らず掌の中のものが形を成し、皮鞘を剥かれた先端に雫を宿し始めた。程なく洩れる甘い喘ぎ。
「ふふ、嬉しゅうて此処も涙を流しておるか。ほんに感じやすい贄じゃ」
 揶揄の囁きが降り、蜜をまぶして滑りのよくなった手の立てる、にちゃにちゃと卑猥な音が、綻んだ蕾を掻き乱す指の音と混じり合って耳を侵す。
「ふ……ふぅっ……んんっんっ」
 快感と苦痛の鬩ぎ合い、歯を食い縛り、懸命に声を押し殺そうとするが。

「――ああっ!」
 体内で暴れる指が内側の一点を捉えた瞬間、喉から短い悲鳴が迸った。
 びくびくと身体が陸に打ち上げられた魚のように跳ねて止まらない。
 予想だにしなかった場所に、激しい刺激を与えられて、狭霧の心が軋みを上げる。
 今自分が味わわされている感覚は何なのか、何故そんなところから湧いてくるのか。それが快であるのも分からぬまま、混乱の悲鳴は嬌声と成り果てる。
「なっ、こんな、ひぁっ、いやあああぁぁ!!」
「厭、ではのうて、好い、であろう?」 
 贄の鈴口に爪を捻じ込み、真白の神が嗤う。
「ひ、ぐっ!痛ぁぁ…あああ」
 焼け付く痛みに四肢を強張らせるも、それは後孔への刺激に揺れる腰と何ら変わらず。紅潮した頬を涙で濡らし、ほっそりした肢体を仰け反らせた。

 その様を、妖しの神の血色の双瞳が愉悦含んで冷たく見下ろす。
「青い実の、殻を割るも一興なれど、そろそろ喰らうとしようかのう」
 二叉に先割れした長い舌で、朱唇をぞろりと舐めた。