Trick or Treat - 2/2

 淡い黄金に輝く蜂蜜が、とろとろと乳首を中心として左胸に垂らされる。次いで右胸へ。
 ゾンビとフランケンシュタインの怪物が、我先にむしゃぶりついた。
 傍若無人な舌が胸の上を這い回って、甘い蜜を舐め取る。乳首をきつく吸っては舌先で転がし、歯でこりこりと甘噛みする。

 割り裂かれて剥き出しになった下肢、茂みの中に隠れるように縮こまったペニスにも、ねっとりとまぶされる。
 そちらへは、待ってましたとばかり狼男が顔を近付け、垂れた蜜を長い舌でぞろりと舐め上げた後、美味そうに銜えた。
 びちゃびちゃ、じゅぶじゅぶと、派手な水音を立てて、甘い棒菓子をしゃぶる。
 負けじと鎌を担いだ死神もテーブルの反対側から飛びつき、二人掛かりの口淫が始まった。
 最初は幼子のように首を振り、必死に腰を引いて拒否したが、そのうちに生贄の瞳が困惑したように胡乱に宙を彷徨い始めた。
 執拗な愛撫に、若い性器が形を成し始めた所為だ。
 胸の小さな実も、刺激を受け続けるうちに硬くしこって、痛みを感じるほど噛まれてさえ、甘い痺れを生むようになった。

「……ン、ふっ、……ンんん」

 己の身体の変化を認めまいとして、歯を食い縛って、悦の滲む喘ぎを噛み殺す。
 顰めた眉と、ほんのりと色づいた目許が、捕食者の嗜虐心をそそって匂い立つ。
 魔物は仕上げとばかり、逆さにしたボトルの口を脚の奥の閉じた蕾に捻じ込んだ。堪らず上がる小さな悲鳴。
「たぁ~んと召し上がれ」
 キヒヒッと魔女が嗤う。
 ボトルを力一杯握り絞り、残った蜂蜜を直腸に注ぎ込んだ。

「ヒッ、イ、」

 短く息を呑み、身体が強張る。
 肛門をぎゅっと引き締めて異物の侵入を拒もうとするが、魔女はボトルを突っ込んだまま円状に動かして、ぐにゅぐにゅと中を捏ね繰り回す。
 敏感な粘膜を巻き込んで、異物が体内で暴れ回る。

「……止めっ、あ、アッ、あ、あ、ンンン、ィひいっ」

 嘆願か拒絶か、大きく開いた唇から断続的に呻き声が上がるが、言葉にならない。
 拘束されて身動きもままならぬ身体をのたうたせ、洩れる響きはむしろ嬌声に近い。
 中身が殆ど無くなった時点で、やっとボトルが取り除かれた。

「それじゃあ、いただこうか」

 赤ら顔のデビルが取り出したペニスは、雄渾で鰓の張った、悪魔に相応しい逸物だった。
 開かれた脚の間に割り込み、グロテスクに筋の浮いた赤黒いモノを、黄金の蜜を滴らせる蜜壺(ハニーポット)にずぶりと挿し入れる。
 容赦なく一息に貫けば、生贄の喉から絶叫が迸った。

「あああああ――っ!!!」

 破瓜の悲鳴にうっとりと耳を傾けた後、徐に腰を動かし、浅く深く抜き差しして、ねっとりと絡みつく処女の肉筒を堪能する。
 囚われの獲物は苦痛から逃れようと懸命に身を捩るが、尻肉を両手で鷲掴みされて引き寄せられては逃れる術はない。

「いいねえ、この締め付け。熱くて甘くて溶けちゃいそうだ」

 ニヤニヤと嗤い、自身が悦を味わうだけでなく、内側から快楽の源を攻める。
 その間も、モンスターたちに股間を嬲られ、執拗に乳首を食まれ、全身を舐め回される煉獄は続く。
 性器や性感帯を弄くり回されて芽生えた快感と、内臓を荒らされる苦痛とに引き裂かれながらのたうつカイの身体が、ある一点でびくりと震えた。
 デビルは仔細な反応を見逃さず、老練にその箇所を重点的に責め立てる。

「チーズケーキちゃんのここ、美味しい美味しいって頬張ってるよ。
 がっついちゃって、淫乱で可愛いねえ。そんなにお腹減ってたのかい?」

 容赦なく肉を叩きつけつつ、耳孔に淫猥な嘲りを吹き込む。
 哀れな生贄は、新たに知ったばかりの感覚に翻弄され、じわじわと蝕まれながらもぎゅっと目を瞑り、懸命に首を振って否定する。

「どれ、儂が上の口にも甘ぁい菓子を馳走してやろうかい」

 悪趣味な軽口、不気味な笑い声とともに、ヴィクトリア朝風の古風な幽霊のひとりが、ストロベリー・ジャムをべっとりと纏ったペニスをカイの口に押し込んだ。
 くぐもった呻き声が上がり、口の端から唾を溢れさせながら嘔吐く口腔内に、構わずジャムを塗りたくる。小刻みに腰を使い、甘い果実の味を満遍なく味わわせる。
 喉奥を蹂躙される苦しさに、カイは顔を真っ赤に染めて涙を流した。

「ほほっ、そうか、泣くほど美味いか。よいよい、すぐに特製の濃厚ミルクも飲ませてやろうほどに」

 幽霊は満悦の笑顔で贄の顔を掴み、一層激しく腰を振りたくった。
 その脇で、青褪めた吸血鬼は、怒張したペニスを生贄に握らせようと、掌に潤滑剤代わりのシロップを垂らして擦りつけた。
 自分の番まで待ちきれず、犯される様を見ながら手淫に及んだミノタウルスは、握った一物から噴き出した精液を、生クリームと称してカイの身体にぶっ掛けて飾り立てた。
 生贄のカイひとりに、飴にたかる蟻のように全員が群がり、僅かでも甘い餌にありつこうと喰らいつく。

 カイの下腹が震え、太腿の内側の筋肉が緊張を示す。
 と、狼男の大きく裂けた口から、白い液体がいく筋か溢れて零れた。
 玩弄する責めに耐え切れず、カイが射精したのだ。
 狼男は美味そうに喉を鳴らして飲み干すと、長い舌を出してべろりと唇の汚れを舐め取った。
 一旦は萎えたペニスはだが開放されず、髑髏の死神が後を引き継いで先端を含むと、尿道口に平たい舌を捻じ込んで執拗に弄った。

 吐精の瞬間の後孔の締めつけを愉しみ、直後に赤い悪魔もたっぷりとカイの腸(はらわた)に精液を放出した。
 最後の一滴まで中で扱いてから、萎えたものを引き抜くと、蜂蜜と僅かに鮮赤の混じる白い濁りがどろりと零れる。
 しかし、すぐさま別の魔物が換わって両脚の間に陣取り、穴を塞ぐ。
 全身に包帯を巻いたミイラ男の、古びた布の隙間からはみ出した、そこだけ生々しい肉棒がどろどろの甘い穴に抽送を繰り返す。

 カイは口の周りを赤いジャムと白濁でべたべたに汚して、今度は鎧の亡霊騎士の固くそそり立ったキャンディをしゃぶらされていた。
 魚人が、蜂蜜と白濁を水掻きのある掌で捏ね回して、波打つ腹に塗り拡げた。

 カイを犯す魔物たちの列は途切れなかった。
 それほど広い家でもなく、そんなに大人数が侵入したとは思えなかったのに、次々と新たな怪物が尻を犯しては口腔に男根を突き入れ、全身を愛撫した。
 知らぬうちに手足を拘束していたロープも解かれて、時に剛毛と鉤爪を備えた手が、時に爬虫類の鱗に覆われた腕が、カイの身体を捻じ曲げ押し伏せて、様々な体位を取らせて弄んだ。

 時間の感覚は消え、絶え間なく与えられる刺激に、理性はとうに焼き切れた。
 まともな思考を喪って、糖蜜の粘度を湛えて蕩けた瞳に映るのは、自宅の狭いダイニングではなく、赫々と篝火の燃える何処とも知れぬ大広間。
 闇の中、自身がその上に宴の贄として乗せられた巨大な宴卓に、無数の魔物が居並ぶ。
 連続する絶頂にイき狂い、際限なく喰われ、穢され、堕ちる。堕ち続ける。

 今宵は悪霊の跳梁跋扈する夜。
 東の空が白むまで、生贄を貪る魔宴は続く。

 

– end –