暗い部屋 - 2/2

「お腹、苦しっ……もぅダメっ……!」
 バスタブの縁をきつく掴み、前屈みの背が小刻みに震える。
 少年は、突き出した尻をもぞもぞと揺らして、悲鳴混じりの泣声を上げながら身悶えた。
「もうちょっとだから、頑張りなさい。これで終わりだから」
 男は少年の肛門に突っ込んだ棒状のノズルを抜こうともせず、無情にも内部に湯を注ぎ続ける。
 バスルームで行われる、いつもの手順。
 下腹が膨らむほど腸内に湯を注入し。腹痛に苦しむ少年が泣いて嘆願しても、散々我慢させてからようやくバケツに排泄を許す。それを数回。
 放出する汚水がほとんど透明に近くなって、ようやく開放される頃には、消耗しきって床にへたり込むのが常だった。

「よく頑張ったな。えらいぞ」
 男は力尽きた少年の体を抱きかかえ、脂汗をかいて冷えた身体に湯をかける。
 その声は、あくまで労りに満ちて優しく。
 大きな掌は未成の細い肢体をしっかりと支え、背から腰へ、滑らかな若い膚の上を滑る。
 やがて、薄い尻肉のあわいに辿り着いた指先が、ぐっと挾間を広げた。
「穴を広げるからな。じっとしてるんだぞ」
 双肉の間にぬるぬるする液体を垂らし、浣腸を繰り返した所為でふっくらと膨らんで色づいた蕾をこじ開ける。

「うっ、う」
 言いつけを守って、硬直した少年の背が、時折耐えかねたように細かく震える。食い縛った歯の間から、嗚咽に似た呻きが漏れた。
 男は宥めるように淡く笑み、華奢な顎を掴んで上向かせた。
「舌を出して。そう、良い子だ」
 突き出された舌を噛み付かんばかりに強く吸って絡め、泡立つ唾液をたっぷりと乗せて。
 小さな唇を塞ぎ、歯茎や舌の根を探って口腔内を蹂躙し尽くした。
「ふ、ぅ……」
 熱い吐息とともに離れた唇の間を、きらめく銀の筋が弧を描いて繋ぐ。
 その間も、節の目立つ指は、絶え間なく双つの肉の奥をくじる。
「あっ、はぁっ……あぁっ……あぁんっ」
「気持ち良いかい、淳士」
 うっすら頬を上気させ、吐息に甘い響きを混ぜ始めた少年に、満足気に微笑んで。
 男はそっとその頭を抱いて、己の胸に凭れかけさせた。

 

 ギシギシとパイプベッドの軋む音、手錠が立てる軽い金属音。
 絡み合う呼吸音と、か細く啜り泣く声、そして何より響くのは、濡れた粘膜を掻き回す粘質の音。
 暗い小部屋は、今では熱気に満ちていた。

「はっ、あっ、ぁあっ」
「淳士のなか、最初は凄くキツかったけど、段々俺の形に馴染んできたみたいだ。ぴったり吸い付いてる」
 少年の両手はパイプベッドのヘッド部に手錠で拘束され、華奢な肢体は膝が顔の殆ど横に来るまで二つに折り曲げられて、男の体の下にあった。
 足首を掴んで広げた大きく割り広げた下肢の間に、怒張した肉楔を打ち込んで、内臓を押しこむほど深く穿っては入口近くまで退くを繰り返す。
 無理矢理に開花させられた蕾は、皺が伸びきるほどに無残に広げられ、充血した粘膜が抽送のたびに捲れ上がった。

「やめて、おとうさん」
 涙と唾液に汚れ、くしゃくしゃに歪んだ顔が、男の胸の下から見上げる。薄闇のなかで黒い瞳が濡れて僅かに光った。

「『やめて』じゃないだろ。『きもちイイよ、おとうさん』だろ」
 男は激しい腰使いで、狭隘な肉筒を容赦なく掘削しつつ微笑んだ。
 両脚を押さえ込まれた少年の細い腰が、陸に打ち上げられた魚のように跳ねる。
 下腹部に生えた、男の小指ほどの大きさのモノが、振動でゆらゆらと揺れる。
「んくぅぅっ、ふぅぅっ……!」
「ほら、こんなに気持ち良さそうにちんちん腫らして。
 ほんとは淳士は、とうさんに掘られるの大好きなんだよな」
 うっすら口角を上げた唇に見えるのは、皮肉の色ではなく、嗜虐でもなく。
 混じりけのない、慈愛と至福。

 繰り返す夜毎日毎の凌辱の間に、すっかり覚えこんだ内奥の快楽の源を、薄い腸壁越しに小刻みに擦り上げる。
「敦士のいいところ、とうさん、全部知ってるぞ。
 ここ、こうやってとうさんのでゴリゴリされるの好きだよな?」
「あ、やあァっ、あっあぁーっ!!」
 角度を変えて丁寧に突かれれば、少年の仰け反る喉と目一杯開いた唇から迸るのは、もはや拒絶の悲鳴ではなく快に溺れる嬌声でしかない。
 手首を拘束する手錠が擦れ合い、薄闇に煩く鳴り響く。

 その様子を満足気に見下ろして。男は顔を近づけ、そっと囁く。
「淳士、とうさんのこと、大好きだろ?もっともっと気持ち良くしてやるからな」
「ぁふっ……ぉとぅ、さん、だい、すきっ……だからっ、も……っ」
 やめて、と続く筈だった声は言葉にならず、意味をなさない音声の連なりに変わった。
「ひぐっ、ひぃっ、い、ぃイっ、いっ」
 痙攣する身体をぐっと押し付け。ぎしぎしとベッドを軋ませて蹂躙する。犯す。

「淳士はかあさんに似て、インランだから。
 すぐ、ちんちんを穴に入れてもらいたくて、堪らなくなっちゃうんだよな」
 ゆるゆると首を振る少年の目尻からまた一筋、新たな涙が流れた。
 男はそれに、労るように唇を寄せ、舌で涙を吸い取って。
「いいよ。とうさんがたくさんしてやるよ。
 かあさんみたいにならないように、一晩中、一日中だって愛してあげるよ」

 魘されたように呟き、射精の快楽に向けて一心不乱に幼い直腸を穢し続ける男の声音は、蜜のように甘かった。

– end –