Buried Alive

「乳首だけでイけるようにしてやる」

 口が裂けるかと思うほどの満面の笑みで、男が吐いたのがそんな言葉だった。
 槐は黒い瞳にあからさまな不安を湛え、自分を取り囲む主人たちを見上げた。
 槐を拉致して輪姦し、性交奴隷に貶めた男たち。
 全裸で床に這いつくばる槐には、彼らは聳え立つ巨人に見えた。

 槐の首には所有の印の首輪が嵌っており、肛門からは直腸をみっしりと埋め尽くすディルドの柄が尻尾のように突き出ている。
 精液こそ洗い流されたものの、様々な色合いの痣やみみず腫れが、象牙色の膚のあちこちを彩る。
 凄惨なまでの色香を漂わせた、加虐の贄の姿だった。

 既に、後孔の刺激だけで射精するからだにされていた。
 過酷な調教を受けた後では、挿入されただけで望みもしないのに勃起する。
 この上、どれほどおぞましく変えられていくのか、恐ろしくて堪らなかった。

 

 天井からぶら下がった鈎の一つに、両手首に嵌った枷を引っ掛けて、足がかろうじて床につく高さに吊られた。
 言い出しっぺの男は、ニヤニヤ笑いを張り付かせて、怯えに引き攣る槐の端整な顔をじっくりと眺めた。
 おもむろに左胸に僅かに浮いた肉粒を摘む。
 奇妙に甘い疼きが、じんとそこから広がった。
 連日犯されながら嬲られていた所為で少し腫れ、敏感になっていたのもあるだろう。無骨な二指に挟まれて痛いのに、グリグリと指の腹で転がされると、尻の奥の快楽の源に鈍い餓えが兆す。
 思わず尻肉を引き締めてしまい、肛内のディルドを一層強く咥え込む結果になった。
 ンッ、と甘い喘ぎが、槐の開いた唇から洩れる。
 男はそれを見逃さなかった。

 右側も餌食となり、薔薇色に色づいた粒を、親指と人差し指で執拗にこねくり回される。
 疼きは相乗効果で更に強くなった。摘まれずとも、指の腹で軽く円を描くように撫でられただけで、腰が揺れそうになる。ペニスだけでなく、会陰までヒクリと震えているのが、自分でも分かった。
 感じているのか、と訊かれた。
 咄嗟に首を振っていた。
 男の笑みが、更に酷薄に、深くなった。
 小さな肉粒を、摺り潰さんばかりに捻り上げる。
 じゃあもっとヨくしてやろうな、と男は嘯きながら、平たい胸から浮くほど引っ張った。
 引きちぎられそうな鋭い痛みに、槐の喉から細い悲鳴が上がる。

 容赦を乞う必死の訴えは、無視された。
 どころか、犬は喋るなと、より一層の激痛が見舞った。目尻に涙が滲んだ。
 正直に頷かなかったから、男の望む答えを返さなかったから、罰を与えられたのだと、遅まきながら悟った。
 その罰を黙って甘受しなかったから、やめてなどと訴えて、逆らうような真似をしたから、折檻されているのだと。
 槐は犬、なのだ。
 ご主人様に与えられる全てのものに感謝しろと、レイプされている最中に繰り返し言われていた。
 犯されるだけの性交奴隷モノが、勝手に人語を話すなど、ましてや持ち主に嘆願する権利などなかった。

 

 散々痛めつけられた後に、乳首をイジメられて悦ぶマゾ奴隷であることを復唱させられ、ようやく許された。
 その頃には、涙と唾液で顔はグチャグチャに濡れ、乳首は両方とも真っ赤に充血して、茱萸の実のように腫れ上がっていた。
 男は、ペンチで乳首を挟むことさえしたのだ。
 それほどの激痛を与えられながら、そこには確かに快感の粒子がまぶされていて。その事実が、槐を更に打ちのめした。

 啜り泣く槐を男は満足気に見下ろした後、床に膝をつき、充血した尖りを口に含んだ。
 火照った肉粒が、温かく濡れた粘膜に包まれる。
 きつく吸われ、舌先で粒を転がされる。ゆっくりと炙られるような快感に、槐の唇から吐息が洩れた。
 傷んだ皮膚を嬲る、ヒリヒリとした痛みさえ、心地良かった。
 痛みに耐えるかのようにひそめられた眉には、恍惚のいろが仄かに漂う。

 男は槐の乳首を実に美味そうに吸い、もう片方にも手を伸ばした。尖りを掌で捏ね、膨らみなど無い筋肉だけの胸を、乳房のように揉みしだく。
 傷んだ皮膚を弄られ、ヒリつく痛みに身体は一瞬竦んだが、それは快感の震えと変わらなかった。
 苦痛と快感が、マーブル模様のように絡んで融け合う。
 いつの間にか桜色に染まった顔は仰のき、丸く開いた唇から、艶めいた喘ぎが絶え間なく零れた。
 空いた手で尻肉を鷲掴まれる。身体が唄う、快楽の歌を自覚させるように。
 ディルドを咥え込んだ腰がビクビクと痙攣し、ピンと勃起したペニスが切なく揺れた。
 強制的に雌にされつつあるからだは、ゆるい刺激では足りぬと、腰の奥深くで訴えていた。

 数日後、性器への刺激も、内臓を蹂躙される圧倒的な快感も取り上げられた槐が、自分からイかせてと強請った上に、乳首だけを弄られて射精するまで、甘美な地獄はまだまだ始まったばかりだ。

 

– end –